top of page

違い

Difference

レザークラフトを進める時に、YouTube、Instagram、書籍、教室などを参考にされると思います。

これらは良い面も沢山ありますが、プロ歴48年の革工芸家に学び、エンジニア視点で感じた決定的な違いについて書きました。

ぜひご覧ください。

 

レザークラフトは様々な考え方や技法があります。

同じ作品を作る場合でも作り手により全く作り方が変わってきます。

つまり、クラフトには「ただ一つの解」があるわけではない、正解というものが無い…ある意味「自由」な世界です。

​​

とはいえ基本的な考え方や技法は存在し、書籍やYouTubeなどで知ることが出来ます。

​​

ただ、書籍やYouTubeなどを見ても何か「画一的」というか「同じ様」な繰り返しの情報で、ある程度みると「物足りなさ」を感じてしまいます

​​

プロの工芸家の方と長い時間を過ごした中で、エンジニアの視点で感じたことは、

「工芸家は芸術家と同じく、論理と感性では感性の方が強いのでは?

…ということでした。

​​

工芸家の先生が当たり前と思っている内容が、すぐにピンとこない、理解できない…ということが何度もありました。

 

もちろん素人の自分には、知識も経験も思考も48年間もプロで生計を立てている方にくらべれば圧倒的に不足しています。

というか全くかないません。

​​

この先生にとって「当たり前」が自分にとって「当たり前でない」ことを考えていくと、一つは次のようなことだと確信するようになりました。

 

作品を作る工程の中で「何が」「どのタイミングで」「なぜ」重要なのか?が全く分からない…

​​

これは技術的なこととは別に、特に時間軸の考え方の有無によるものだ…ということに気付きました。

 

 

​他のクラフトも同じだと思いますが、レザークラフトでは、ある工程の順番を間違えると後戻りできず、作品自体を完成させることが出来ず確実に失敗する重要なポイントがいくつもあります

​​

この重要なタイミングが「いつ」「なぜ」発生し、その時「何の技術」が必要になるのか?…が、

工芸家の先生は「感覚的に分かっている」、別の表現で言うと「頭の中に具体的に思い描けている」が、

素人の自分にはこの時間軸の感覚やその時何がポイントとなるのか?が全く無い…ことを理解しました

​​

​​

​エンジニアの世界では、時間軸や工程の順番が不明瞭な時などを「見える化」「数値化」する考え方があり、問題点を解決する手法の一つとして「フローチャート」を用いることがあります。

​​

フローチャートとは、各工程の順番などを時系列に並べて矢印で記して工程の順番などを分かりやすくする手法の一種です。

​​

工芸家の先生の頭の中を「見える化」「可視化」出来ればこの点をクリアーできるのでは?…と考えました。

こんな感じです。

 

「見える化」、「可視化」することで、

作品を作る前から「どのタイミング」で「何を」「なぜ?」注意しないといけないのか?」がハッキリする

…ことが分かりますでしょうか?

​​

どのポイントが重要か?そこのポイントに繋がるひとつ前の工程ではこうしないといけない

…など、全てが連携してくることも明確になってきます

​​

​​

先ほど、工芸家は芸術家と同じで「論理」より「感性」が強いのでは?と書きましたが、フローチャートを見ていくとこの考え方も間違っていることが分かります。

なぜなら、論理・ロジックもしっかり考えておかないと作品を完成させることが出来ないですからです。

​​

​​​

工芸家の先生と会話していると、

「レザークラフトで型紙から作品を作るだけなのはクラフトとは言えないよなぁ。

クラフトで一番重要で難しいのはこの「思考」部分なんだよなぁ」

…ということをおっしゃいます。

​​

特に今まで作ったことのない作品やオーダーの作品などは、

 

納期という時間的な制約や材料を無駄にしないコスト的な制約

これら心理的なプレッシャーがある中で、このフローチャートを頭の中で具体的にイメージ、試行錯誤を繰り返し、

失敗を極力少なくして完成させる…という高度な「思考」と「技術」が必要になってきます

(プロでも作成過程で失敗する時はあるので、素人が失敗なく完成させるのはとても難しいです。でも極力失敗を減らせる「考え方」や「技術」はありますので安心してくださいね)

 

​​​書籍やYouTubeなどの解説では、極論すると準備された型紙を一直線のフローに従って、作っていく…という流れがほとんどだと思います。

例えるなら1次元的で電車のレールに乗って進む感覚です。

 ​​​​​

でも、前述のフローチャートを見て頂くと分かると思いますが、作品作りは決して1次元的なものでは無く、少なくとも時間軸を考えると2次元的なものであることが分かります

 

パーツ点数が多い作品になると、さらにこの点を作る以前に理解しておく必要があります

​​

 

この様に、クラフトで重要なのは、道具や材料、小手先の技術やスキルではなく、工芸家や作り手、教える方の「考え方」や「思考」が、実は一番重要なポイントである…ということなんです。

 

「考え方」や「思考」は直ぐに身につくものではなく、長い年月にわたり、「思考」し「トライ&エラー」を繰り返することでのみ築きあげられるものです。

また、ただ経験年数が長いだけでも意味が無く、その間どれだけ真剣に向き合ってきたか?がとても大切になってきます。

 

「考え方」や「思考」そして「想い」は、人であれば言動や表情に、言葉や文字であれば行間に現れます。

 

おそらく、YouTubeや書籍で無意識で感じる画一的な感覚は、このような観点が伝わってこないから…だと思います。

 

​​

だからこそ、プロ歴48年という長い年月で得られた経験や知見に裏付けられた「技術」「考え方」「思考」を意識して、想いも含めて伝えることが、他とは決定的に違う点である…と考えています。

 

 

なんだか少しややこしくて難しいお話になりましたが、この重要な「考え方」や「思考」するというのが実は、難しいパズルのような物で考え方しだいでは、ある意味究極的に?楽しいものではないかとも思っています。

知的なパズルと考え完成までをイメージし、作ってみて合っていればパズルが解けた時と同じ快感を得られます。

もし、間違っていればそれは知識として蓄えられ経験値があがり次の作品作りに必ず生かせることになります。

​​​​

いががでしょうか?

「レザークラフトの魅力」でも書きましたが、自分で作ることの楽しさというのは作品そのものもあるのですが、作品以外にも「知的な楽しみ」もあるんですよね。

長くなってしまいましたが、ぜひ、レザークラフトというモノ作りを通して、限りある人生の一瞬でも楽しく豊かな時間を過ごして頂ければ幸いです。

bottom of page